Googleが新しいプロジェクト「Tango」を発表しました。Tangoは当サイトでも先日お伝えした、元モトローラの研究開発部門ATAPが推進する野心的な取組で、スマートフォンで現実世界の空間を3Dマッピングして仮想体験を作り出そうとする壮大なプロジェクトです。
ATAPはあのマッドサイエンティスト(?)集団DARPAの元総責任者Regina Dugan(レジーナ・デューガン)氏が率いる先進的な研究開発部門。プロジェクトTangoは、ATAP(DARPA)がそうであったように、複数のテクノロジー企業や機関等において専門知識を有する人々を集約してコラボレーションにより進めていくプロジェクトとなっています。では肝心のプロジェクトTangoとは何なのでしょうか?Tangoは画面サイズ5インチ程度のAndroidスマートフォンで端末の加速度センサー等を活用して3Dモーションを追跡/スキャニングして、3D空間のマッピングを行います。例えばこれによりソファーやベッド等の家具を買いに出かける前に、スマートフォンで室内をスキャニングすることにより室内に配置されている家具やレイアウト等の寸法を測ることができ、お店で室内に合う家具を選ぶことができます。また空間のレイアウト等の情報をスキャニングして3Dマッピングすることにより視覚障害者等をサポートすることにも役立てることができます。その他にも、スキャニングされた3D空間を仮想現実のゲーム空間に活用することもできるのではないでしょうか。スマートフォンに搭載されるTangoのセンサはなんと秒間2億5000万以上の3Dの計測を行って、3Dモデリングを構築することができるそうです。
Googleのストリートビューで入っていけない空間等もこれらの機能により全ての空間データがデジタル化されて、ネット上に整理されるようになるかもしれません。例えば不動産情報等、現状であれば間取り図でしかなかった平面情報が3D空間としての情報におきかわるかもしれません。
では3Dプリンティングとの可能性はどうなのでしょうか?既に、スマホで3Dスキャニングができるアプリ123D CatchやTrimensional等が存在しますが、今後はスマートフォンに、3Dスキャニング機能が標準搭載されるかもしれません。携帯電話が登場した時に、カメラが実装されることを予測できた人はいなかったかもしれません。それが今ではカメラはもとより動画撮影や、アプリによって機能拡張されたスマホは画像や動画等のマルチメディアデータをオーサリングすることまでもが可能になっています。現状の3Dプリンティング市場においては、出力の為の3Dプリンターの進化は目覚ましいですが、出力する為のデータが不足しています。現時点では3D CADデータを作成できる人に限られている3Dデータの作成ですが、このようなデバイスが進化すると、スマホさえ持っていれば誰もがその辺にある実空間のオブジェクトをスキャニングすることにより、簡単にデータが作成でき、それらのデータはネットの空間を流通しはじめるかもしれません。位置情報等を活用して同じ地点のデータであれば、他人がスキャニングしたデータと合成して、完全な3Dモデルを作りあげることができるようになるでしょう。様々な人が同一の被写体を撮影した写真を、一つの3Dデータに合成する点においては、数年前にマイクロソフトが発表したPhotosynth等はイメージが近いかもしれません。
このような時代が来たときに、著作権等の考え方はどうなるのでしょうか?誰もが簡単にデータの複製ができるようになったとき、本当の意味でのオリジナルデータをつくることができる人が、大きな注目を集めることになるのかもしれません。次世代のスーパークリエイターや芸術家等は、こういうところに突如として現れるのかもしれませんね。