作成者別アーカイブ: 3D CAD DATA.com

3Dプリンターはオワコン?あの大ブームのその後を検証:第一部

今から4年前の2013年、突如バズワードのごとく「3Dプリンター」が登場しました。クリス・アンダーソンが「MAKERS:21世紀の産業革命が始まる」を書き記し、モノづくりブームの象徴として、3Dプリンターやドローン等が大きく注目されました。
その後ドローンは堅実に市場の拡大をしていますが、3Dプリンターのその後はどうなったのでしょうか?
実際に2013年に3d-caddata.comのサービスを立ち上げ、約4年間のサービス運営を通じて、3Dプリンター市場の変化を実際にどのように体感したのか?またこの先どのようになっていくと考えているのか?
あの当時の大熱狂から約4年が経過した現在までを独自の視点で、全4部に分けて、多角的に検証/考察していきたいと思います。

  • 第一部:公開中「2013年の3Dプリンター狂騒曲」
  • 第二部:近日公開予定「重要特許切れで市場が爆発的拡大って言ってたじゃん?」
  • 第三部:近日公開予定「家庭用3Dプリンターの理想と現実」
  • 第四部:近日公開予定「で、ぶっちゃけどうなるの?家庭用3Dプリンター業界のその後と未来予測」

2013年の3Dプリンター狂騒曲

今から振り返れば、あの3dプリンターブームからもう4年もたったのかと感慨深いものでもありますが、当時の様子を振り返ってみましょう。

なぜ2013年に3Dプリンターブームが起こったのか?

3Dプリンターの技術自体はそれほど新しくて革新的な物ではなく、実は最初の発案者は日本人の小玉秀男氏と言われています。

Bre Pettis via wikipedia

ではなぜ2013年に大ブームが起こったかというと、現在の家庭用3Dプリンターの造形手法の主流でもある熱溶解積層法(FDM方式)の特許が2009年に切れ、それに合わせて、イギリスの研究者等を中心に3dプリンター開発のオープンソースプロジェクト「Reprapプロジェクト」が立ち上がります。

以降じわじわと技術の進化が進み、RepRapをベースに設計した家庭用の3Dプリンターの製造販売を行うベンチャー企業がいくつか登場し始めます。

このタイミングを見計らって、元美術教師だったブレ・ペティス(Bre・Pettis)がMakerbot Industries社を立ち上げます。

Makerbot社はシードラウンドで知人等から1,000万円程度の資金を調達し事業を開始します。事業が軌道にのりはじめると、2011年の8月にはVCのThe Foundry Groupから約10億円の資金を調達し、一気に事業を拡大して、デスクトッププリンター市場の最注目企業となります。そこに強豪となるStratasys社や3DSystems社等を巻き込んだ家庭用3Dプリンターブームが世界中で一気に広まりました。

多くの家庭用3Dプリンターが登場

2010年から2012年頃まではReprapプロジェクトをベースとしたDIY感のある組み立て式の3Dプリンター等がじわじわと広がり始めていました。そこに2013年に大手3Dプリンターメーカーが、家庭用3Dプリンター市場に参入したことにより一気に市場が拡大し、様々なデスクトップ3Dプリンターが登場しました。中でも特に有名なのが、下記の物です。

  • Makerbot Repricator
    Makerbot社が製造販売した家庭用3Dプリンターです。当時は組み立て式が多かった中、この商品は最初から完成した形で販売され、そのデザインや価格等から、デスクトップ3Dプリンター界のフェラーリとも言われ、誰もが欲しくなるような非常に商品性の高いプロダクトでした。
  • Cube
    3Dプリンティング業界大手の3D Systems社が家庭用3Dプリンター市場に参入したのが、このCUBEです。当時は米国内を日産の自動車Cubeに、このCubeを乗せてキャラバンプロモーション等も行っていました。

この2社の3Dプリンターが家庭用3Dプリンター市場をけん引する形で、多くの3Dプリンターが世界中のベンチャーをはじめとした企業から登場しました。

また当時盛り上がり始めていた、IndieGoGoやKickstarter等のクラウドファウンディングサービスにおいても、多くの一般人から出資を募る形で、大小さまざまな企業が3Dプリンターの製造販売に乗り出しました。

オープンソースであるRepRapPJをベースにすることにより、ベンチャー企業であっても、特別に大規模な資金調達をしなくても比較的簡単に参入することが可能であった為、3Dプリンターとクラウドファウンディングは相性が良く、キックスターターから生まれた家庭用3DプリンターのMicroは後に家庭用3Dプリンターのリードカンパニーとなっていきます。

複数のデータ共有サービスがスタート

3Dプリンターというハードウェアの登場と合わせて、その元となるデータを提供したり共有するサービスも多数登場しました。

中でも最も有名なのが、Makerbot社が運営するThingiverseです。当時このサイトを初めて見た時、こんなに素晴らしいデータが誰でも無料で際限無く入手することができると知って、多くの人が感動したものです。このサイトを見て3Dプリンターの購入を決めた人も多くいたはずです。

Makerbot社が提供するThingiverse同様、3Dプリンターメーカーがデータ配信サービスを運営するパタンはいくつもあり、3D Systems社もCubeユーザー向けのデータ配信サイトCubifyを提供していました。

それ以外にもフィギュアやジュエリー等の特定ジャンルに特化したデータ配信サイトや、3Dスキャニングした人体モデルデータを配信するサイト、より複雑なモデリングデータを共有するサイト等、雨後のタケノコのように多くのデータ提供サイトが登場して、市場の盛り上がりを勢いづけました。

上記サイトはいずれもアメリカ等の国外サービスですが、日本国内でも同様のデータ提供サービスが登場し始めます。当サイトの3D CAD DATA.COMもそのようなサービスの中の一つですが、その他にも、テックシェア/モノローグ/3D-P/sharedmesh/model-wave/delmo等の国内サイトが数多く登場します。

また大英博物館やスミソニアン博物館等も、美術館に収蔵している収蔵品の3Dデータを3Dプリンター向けに提供するなど、様々なプレイヤーを巻き込んでデータ配信業界を盛り上がりを見せました。

3Dデータを作る為のオーサリングソフト

3Dプリンターで造形物を出力する上で必要な物は、その元となるオブジェクトデータです。これらのデータを無料で入手することができる共有サイトが数多く登場しますが、またこれらのサイトにデータを投稿している人達は、自ら様々な3Dモデリングのオーサリングソフトを利用してデータを作成します。

中でも有名なのが、下記の3つの3Dソフトです。

  • MAYA
    元々は米エイリアス システムズ社が開発販売していましたが、2005年10月にオートデスク社に買収されます。ハリウッド等の最先端の映像制作現場で多くのプロユーザーに支持されて使われており、映画の他にもゲームやCM等の映像制作の現場でも使われています。
  • Softimage
    1986年にカナダのモントリオールでアニメーターのDaniel Langlois氏にてSoftimage社が設立され、その後1994年にマイクロソフトによって吸収合併され、1998年にカナダのAvid社が買収して子会社化。2008年にオートデスク社がAvid社から、Softimage社の全事業を譲り受け買収し現在に至っています。
  • 3DS MAX
    もともとはアメリカのサンフランシスコにあったKinetix社によって開発されていたが、AutoCad等のCADソフトで有名なオートデスク社が買収して開発販売を行っているハイエンドな3DCGソフトです。

元々はライバル同士であったこれらのソフトは、最終的に3DCAD業界のリーディングカンパニーであるAutodesk社に買収されて、現在はいずれのソフトもAutdesk社が販売しています。

ちなみにAutodesk社を一気に業界のリーディングカンパニーにまで育て上げた社長のキャロル・バーツ氏は、その功績を評価され、アメリカ本国Yahoo!の社長に就任しますが、2年で解雇され、その後2名の短期間の社長交代を経て、2012年にGoogle出身のマリッサ・メイヤーが社長に就任するも、2016年に解雇され、2017年にYahoo!はAOLに買収されて現在に至っています。

これらのハイエンドな3Dモデリングソフト以外にも、操作性を簡略化して誰もが容易に編集できる廉価版もしくは初心者でも使える3Dモデリングソフト等もこの時期にたくさん登場しています。

実際に家庭用3Dプリンターで出力するにおいては、そこまで高精細/高度なモデリングデータが必要ではありません。そのようなことからもハイエンド向け3Dソフトを提供していたAutodesk社からも、家庭用3Dプリンター向けのデータオーサリングを目的とした簡易的な3Dモデリングソフトがいくつか発売されます。中でも有名なのが、Autodesk社が提供していた123D Design。デスクトップ版アプリ、Webブラウザ版、モバイル版などの提供を行っていました。

3Dスキャナでなんでも簡単スキャニング

The Matter and Form 3D Scanner

いくら3Dソフトの操作が簡単になったとはいえ、なかなか誰もが容易に習得できるものではありません。そんな時に誰もが思うことは、実際の物をスキャニングできればよいのになということでした。

そのようなニーズを背景に、3Dスキャナーも数多く登場します。ハンドヘルド型の3Dスキャナーや、デスクトップ型の3Dスキャナー、マイクロソフトのキネクトを利用した物等、様々な3Dスキャナーが登場しました。

このように誰もが手に入れられる価格帯の家庭用3Dプリンターが一気に市場に登場してきたのに合わせて、データ共有サイト、データ編集ソフト、3Dスキャナー等のように、ハードとソフトが一気に絡み合って3Dプリンティング市場を盛り上げていきました。

その他の関連サービス

この当時世界中の誰もが思いつく物として、3Dプリント版写真館というビジネスモデルが登場します。街の写真館のように、お店に訪れて3Dスキャナで身体データをスキャニングしてもらい、そのデータを3Dプリンターで出力してフィギュアを作ります。

当時国内では表参道に「OMOTE 3D SHASHIN KAN」が期間限定でオープンして話題になりました。同じ時期に、実際の書籍を持ち込んで電子データ化する業務を請け負う自炊ショップなるものがたくさん登場しましたが、似たような3D写真館のコンセプトショップも話題になりました。

結婚記念に夫婦の3Dフィギュアを作る等のある一定の需要はあったようですが、何分価格が高いこともあり、あまりはやらずにブームが過ぎさり、世の中に定着するまでには至りませんでした。

VC界隈も盛り上がる

もちろんこの盛り上がりをベンチャーキャピタル界隈も見過ごすわけにはいきません。
当時3D CAD DATA.COMを立ち上げた時、数社のVCからお声がかかり、出資検討の為の面談を受けたりもしました。

もちろんVCの面談は、100社をピックアップして、20社と面談して、10社に絞り込んで、最終的には1社に出資するもしくはどこにも出資しない、くらいの確率なので、面談の声がかかる程度はさほど珍しいことではないのですが、立ち上げて早々のまだ実績も出ていないウェブサービスにまでVCが面談を申し入れてくるほど、当時の3Dプリンティング市場は盛り上がっていました。

キムタクも3Dプリンター

ところでちょっと余談ですが、当時2013年の10月からTBSで放映されていた木村拓哉さん主演の「安堂ロイド」というドラマを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ドラマの正式タイトルは「安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜」。

このドラマの中で、主演の木村拓哉さん演じる安堂ロイドは、3Dプリンターならぬ5Dプリンターで時空を行き来していたとか?

このドラマ放映以降、3Dプリンターは下火となってますが、AIは今まさにこれから盛り上がろうとしている最もホットな領域でもあり、その点ではこのドラマの着眼点はなかなかの物だったのではないでしょうか。AIをドラマ中でどのように扱ったり表現していたのかは知りませんが。

当時2013年は国民的スター、キムタクですら3Dプリンターに絡めてラブストーリーを演じるというくらい3Dプリンターは盛り上がっていたんですね。

第一部のまとめ

2013年に突如降ってわいたように起こった3Dプリンターブームは、偶然に興ったのではなく、それ以前から存在した技術やFDM様式の特許切れ、RepRapPJの成熟や、クラウドファンディング等新たな資金調達方法の登場等が、モノづくりブームに重なり一気に世界中でブームが起こりました。

そこに3Dプリンター、3Dスキャナ、フィラメント、データオーサリングソフト、データ共有サービス等のプレーヤーが多数登場し、人々と市場の期待を一身に背負ってグローバル規模でムーブメントを起こしたのでした。

次回第二部は「重要特許切れで市場が爆発的拡大って言ってたじゃん?」です。

2万円で買える3DプリンターThe Microは安くて小さいだけなのか?

4月7日(月)にキックスターターに登場した小型の家庭用3DプリンターThe Microは、わずか24時間程度で1億円もの支援金を集め、6日後の4月13日時点では、なんと2億5千万円以上の支援金となっています。これまでも数多くの3Dプリンターが登場してきましたが、The Microはなぜここまで注目されているのでしょうか?
そのヒントは、The Microがキャッチフレーズとしている「真にコンシューマー向けの3Dプリンタ」というものが言い表しているかもしれません。2013年は数多くの家庭用3Dプリンターが登場し、多くのユーザーの元に届きました。家庭でも3Dプリントができる感動をみんなが味わったと思いますが、それと併せていくつかの不満もあったと思われます。これらの不満に真正面からアプローチしたのがThe Microであり、それが「真にコンシューマー向けの3Dプリンタ」というキャッチフレーズです。ではその不満とは何でしょうか?

  • 価格
    やはり一番の不満は価格かと思います。これまで数百万円もした3Dプリンターが、数十万円で買えるようになったと言えど、数十万円も出すなら、このような物に興味を示すクラスターには、スマートデバイスやウェアラブルPC等、その他にも欲しい物が次から次へと登場しています。そん中、2万円と言われればこの価格を否定できる人はいないでしょう。
  • デザイン
    既に2万円程度の3Dプリンターは存在しています。しかしそれらは組み立て式であったり、デザインにおいても粗野な物が多く、値段相応のデザインでしかありませんでした。それらと比較すると、The Microはデザインにも優れ、カラーバリエーションは5つも用意しています。
  • 大きさ
    これまでの家庭用3Dプリンターはそれなりの大きさで、かなりの場所をとる物が大半でした。大き目の造形物を出力するには、それ相応のプラットフォームのサイズが必要となり、その結果3Dプリンター本体のサイズは大きくなってしまいます。しかしそれなりの大きさの物を出力しようとした場合、数時間、場合によっては10時間以上もかかる場合があります。数時間動かしていて、途中で出力エラーということもあります。フィラメントの量もかさみます。そのような中で、そこまで大きな物を頻繁に造形することはあまりない、ということにみなさん気付いたのではないでしょうか。
    ということは、造形物の大きさよりも、3Dプリンターの小ささの方が重要と感じるようになってきました。
  • フィラメント
    これはThe Microにおいて特筆すべき点です。大ヒットした3D SystemsのCubeは専用カートリッジ式の3Dプリンターとなっており、これが非常に評判の悪いものでした。1つのカートリッジにはフィラメントが350グラム程度しか入っておらず、それで6,300円もします。ちょっとした物を1つ作るだけでもフィラメント代だけでも数百円もしてしまいます。こんなにコストパフォーマンスが悪いと、造形で失敗することもできず、気軽に何でも出力してみようという気分にはなりません。
    この課題に対して、1kg3,000円程度の市販のフィラメントをCubeで使うためのフィラメントハックまで登場し、多くのCubeユーザーが試しました。しかしこのフィラメントハックもファームウェアがver.2.05になってからは使えなくなってしまいました。そう、3D Systemsは蛇口を安価で提供して、水代で稼ぐ水道モデルを徹底しています。カラープリンターとインクで悪名をはせたあのビジネスモデルをそのまま3Dプリンターに持ってきました。カートリッジで稼ぐビジネスモデルです。最近評判の家庭用3Dプリンターダヴィンチも同様の専用カートリッジモデルです。
    しかしそのモデルに真っ向から挑んだようなThe Micro。もちろんThe Microの専用フィラメントを使うのですが、通常の市販のフィラメントも問題なく使えるようです。そのための外部ポートを設けており、そこに市販のフィラメントを差し込んで簡単に使えるようになっています。むしろ市販のフィラメントでも便利に使えるように配慮されているのです。
    これは、これまでの3Dプリンターが、市販のフィラメントを絶対に使えなくしていたのとは真逆のアプローチで、非常に評価できることなのではないでしょうか。しかも本体価格はCubeが17万円なのに対してThe Microは2万円(キックスターター価格)。ABSやPLAに加えてナイロンや Chameleon等の素材も使えます。
  • ソフトウェア
    たいていの家庭用3Dプリンターは箱から出してから、各種の設定が必要になります。造形プラットフォームを水平にしたり、プリンターヘッドとプリンターパッドの距離の設定やプリンターヘッドの温度を設定したり。しかしThe Microはプリントヘッドを水平にする自動水準測量機能とオートキャリブレーション機能を有しており、またプラグアンドプレイで各種セットアップ等も最小限となっています。
    付属の専用ソフトウェアは、クリックやドラッグ等で簡単に操作することができ、初心者にも非常にやさしい設計です。また上級者向けには、オープンソースのモデリングソフトからの出力も可能で、対応ファイルはstl以外にもobjをサポートしておりLinuxもサポート予定となっています。
  • 積層ピッチ
    3Dプリンターの造形品質を語る上で重要な積層ピッチは0.05mm。Cubeが0.2mmということを考えると、0.05mmがいかにすごいかが分かると思います。恐らくこれは造形サイズが小さいThe Microだからこそ製品コンセプトとして合っているのかと思われます。
    もしこれが大きなサイズも造形できる3Dプリンターなら、0.05mmで造形するとなると、かなりの時間がかかってしまいます。例えば、積層ピッチ0.2mmで造形したデザインデータが5時間かかった場合、それと同様の大きさの物を出力しようとすると、4倍の20時間もかかってしまいます。プリンターヘッダーの動きのスピード等もあるので単純に比較はできませんが、それでも数倍の時間になってしまうでしょう。
  • 欠点
    ここまで見ると、まさに最強/最高の家庭用3Dプリンターですが、欠点はないのでしょうか?キックスターターでの199ドルで購入できる250個の枠は既に埋まっていますが、実際の一般販売価格はいくらくらいになるのでしょうか?299ドル(3万円)以内であれば非常に評価できる価格ですが、まだ詳細は発表されていないようです。ちなみに海外への送料は50ドル~75ドル程度とのこと。
    製品の発送時期は、キックスターター等の一つの課題でもありますが、かなり先となっています。299ドル枠のメンバーには2014年11月。199ドル/249ドル枠のメンバーには2015年2月となっています。来年の2月となるとかなり先ですよね。その頃にはMicroよりも魅力的な3Dプリンターが登場しているかもしれません。
    しかし最速で入手できる899ドルの支援枠は、2014年8月発送となっています。この最速入手価格899ドル(約9万円)は、3Dプリンター本体以外にもフィラメントやその他の特典も付いているので、この値段が市販価格の参考になるかはわかりませんが、もしかしたら199ドルという価格は、プロモーションの為の価格ということもありえるかもしれません。
    しかし全世界に199ドルというインパクトで登場したThe Microが、一般市販価格が5万円以上となってしまっては、おそらくその魅力は半減してしまって、通常の3Dプリンターの中にうもれてしまうでしょう。そう考えると、やはり299ドルくらいを期待したいところです。
    また3Dプリンターで重要な物は使い勝手。よくあるフィラメント詰まり等の出力失敗等はどれくらい起こるのか、それともほとんどないのか、その辺も気になるところです。
    しかし価格をここまで下げて、且つ水道水モデルでないThe Microで彼らはどのようにして収益を出していくのでしょうか?
    The Microを製造販売するM3D社の創業者デイヴィッド・ジョーンズ氏は「3Dプリンターが安価になり、たくさんの人の手にわたったときにどういうことが起こるのか。われわれはその可能性の表面をかすったにすぎない」と語っています。

 

現時点で公開されている情報で判断する限りにおいては、総合的に最強の家庭用3Dプリンターかと思われます。しかし何故日本からはこのような製品が出てこないのでしょうか?
特に新しい技術や高度な技術を採用しているわけではなく、やはり製品コンセプトの作り方や、この値付けで売れるビジネスモデルの設計、プロモーションや売り方の戦略等が長けているのではないでしょうか。
この品質/価格を実現するに際しての収益モデルはどのようになっているのか?このような製品が登場してくる背景には、多くのVCや技術者等を中心としたシリコンバレー等のエコシステムは言うまでもなく大きく影響していると思われます。そう考えると、日本はまだまだアメリカから数周遅れたような環境にあるのかもしれません。

飲むのがもったいない?3D技術とウィスキーを組み合わせたらこんなに凄いことに

3D造形技術の一つとして3Dプリンターが近年注目を集めていますが、3D造形技術にも様々な手法があります。その中の一つとして、CNCという手法があることをご存知でしょうか?CNCとはコンピュータで様々な装置をコントロールして造形物を作り出す方式です。例えばドリル等の工作機械の移動量や移動速度等をコンピュータで制御して立体物等を削り出して造形します。Computer Numerical Controlの略称でCNCと呼ばれます。

データさえあれば複雑な形状であっても、短時間で精巧な造形物を作り出すことができ、また繰り返していくつもの物を作り出せる等の特徴もあり、現在多くの工作機械で採用されています。
そのようなCNC技術を活用して、氷の塊から3Dデータを元にしてCNC技術でウィスキーのロックアイスを削り出すキャンペーン「3D on the Rocks」をサントリーが始めました。

期間中応募した人の中から抽選で10名の方が、応募した3Dデータのロックアイスでウィスキーが飲めるバーに招待されます。Autdesk社のスマートフォンアプリ「123D Catch」で氷にしたいオブジェクトを3Dスキャニングして、Autdeskの3Dデータ投稿サイトにデータをUPします。そのUPしたデータのURLを応募フォームに記載して応募するだけです。
スマートフォンアプリ「123D Catch」でどこまでの精緻なスキャニングができるかはちょっと疑問?ですが、とても面白い取り組みなのではないでしょうか。3D on the Rocks

超速報!!超小型/高機能/低価格と3拍子揃った3Dプリンター「The Micro」がキックスターターについに登場!

先日当サイトでもお伝えして大反響だった、小型で低価格な家庭用3Dプリンター「The Micro」がキックスターターについ先ほど登場しました。当初は2014年3月中にキックスターターに登場と発表されていましたが、若干遅れていたようで、つい先ほど「The Micro is now available on Kickstarter!」というメールが届きました。
早速キックスターターを覗いてみたところ、すごい勢いで支援金が集まっているようです。この記事を書き始めた時は500万円くらいだった支援金が数分後の今では既に1,000万円を超えています。リアルタイムで支援金が増えていっているこの勢いを見ると、いかにこの3Dプリンターの注目が高いかが分かります。
「The Micro」の詳細なスペック等は、引き続きレポートしていきたいと思います。

空間に絵を描いて3Dモデリングができる「GravitySketch」

3Dプリンターは買ったけど、3Dデータが作れなくて、その後3Dプリンターは押入れに眠っているという人も以外と多いかもしれません。3Dプリンターが市民権を得るためのブレイクスルーは、誰でも簡単に3Dデータが作れるようになることかと思います。
そんな中、空間に描いたスケッチを3Dデータにすることができる製品が登場しました。専用メガネと赤外線ペン、専用の格子状パッドの3つからなるこの製品は、パッドの上の空間にペンをはしらせて好きな物を描きます。

AR技術や空間認識技術を組み合わせたこの製品は「GravitySketch」と名付けられ、イギリスの「ロイヤル・カレッジ・オブ・アート」で進行中のプロジェクト。既に基本となる特許は申請済みで実用化に向けての開発が進んでいるようです。

これなら絶対欲しい!洗練されたデザインの3Dペン「LIX」

昨年キックスターターに登場した3Dペンの3Doodlerは2億3千万円の支援金を集めて大注目を集めました。その後3Doodlerに続けと、いくつもの3Dペンが登場しています。
しかしいずれもデザインが優れておらず、ペンの太さや重さ等いくつもの課題があり、“ペン”と言うには少し無理があるような大きさでした。空間上に絵を描くようにして使う3Dペンは、長時間使い続けると手が疲れたり痙攣したりするくらいの負担がかかります。特に精細なデザインをする場合には、細かくペン先をコントロールする必要がありますが、重くて太いとそれも困難なことは想像に難くないと思います。2次元の絵を描く時、書道をする時、もしその時に使う筆が太くて重いと大変ですよね。3d pen lix

それらの課題を解決しようと、人間工学に基づいたデザイン性の高い3DペンがLIXです。アルミのボディで洗練されたデザインとなっており、LED等もいい感じで配置されています。これなら机の上のペン立てにさしておくこともできますし、インテリアとしてもかっこいいですよね。実際には140ドル(14,000円)で販売される予定ですが、その前にキックスターターに登場して、70ドル(7,000円)で支援金を募るようです。3d pen lix

LIXを開発したのは、Delphine Eloise Wood / Anton Suvorov / Ismail Baranによって今年設立されたイギリスのスタートアップ。彼らは芸術と技術(芸術工学)のバックグラウンドをもっているとのことで、このような優れたプロダクトを生み出せるということに納得です。
このように3Dプリンティングの市場が成長していくにつれて、スペックや機能性だけではなく、今後は製品(プロダクト)のデザイン性等も重要な要素になってくるのかと思われます。

3d pen LIX

高精細な造形が可能な光造形式の家庭用3Dプリンター「Projet 1200」が登場!

現在家庭用3Dプリンターとして市場に出回っている物はFDD形式(熱溶解積層法)となっており、フィラメントを熱で溶かしてZ軸方向に積層して造形していく方式です。また先日当サイトでもお伝えした2014年の2月に特許が切れたSLS形式(レーザー焼結法)は、粉末状の材料にレーザー光線を高出力で照射して焼き固め造形していく方式です。そして今回3D Systemsが発表したProjet 1200は、SLA形式(光造形法)の3Dプリンターです。

光造形の3Dプリンターと言えば、キックスターターで3億円もの支援金を集めたFORM1等が有名です。やはり現在主流のFDD法式3Dプリンターでは、どうしても精密なデザインや細かな物を造形するには限界があります。なので、精密なデザインを得意とする光造形式の3Dプリンターが注目されているのですが、まだまだ値段が高く場所も取るため、一般家庭に普及するまでの物にはなっていません。しかし今回発売されたProjet1200は、価格は49万円、サイズもデスクトップサイズとなっています。

基本スペック

  • 価格:4,900ドル
  • 解像度:56ミクロン(585dpi)
  • 積層ピッチ:0.03mm
  • 造形スピード:14mm/h
  • 素材:VisUet FTX グリーン
  • 最大造形サイズ:縦43mm×横27mm×高さ180mm
  • 対応データ:STL
  • 対応OS:Windows

上記の公開されているスペックからすると、造形サイズは小型な物の造形に限られそうです。また素材が限定されていることもあり、用途的には指輪等のアクセサリー、歯科用ワックス等の鋳型の原型造形等に向いているようです。
Form1が33万円なので、比較すると49万円は高く感じるかもしれませんが、3Dシステムズは企業規模や信頼性はもとより、販売チャネルやアフターサポート等もしっかりしているので、単純な製品の価格だけでの比較は難しいかもしれません。Cubeの部品交換等、3Dシステムズのアフターサポートは親切な事で有名です。

多くの人がフィギュア等を作りたいと思っていると思いますが、造形サイズが横27mmだとちょっと厳しいかもですね。それと比較するとForm1は125mm x 125mm x 165mm となっているので、同じ光造形方式の3Dプリンターであっても、用途によってどれを買うかをじっくり検討した方がよさそうです。

強度がすごい!カーボンで造形できる家庭用3Dプリンター「Mark One」が登場

家庭用3Dプリンターと言えば、造形素材はABSやPLA等のプラスチック素材をイメージすると思います。最近では造形素材にも、様々な物が登場しはじめており、家庭用の3Dプリンターでも金属等での造形が可能になりはじめています。そんな中、カーボンファイバー(炭素繊維)での出力造形が可能な3Dプリンターが登場しました。

何気に耳にするカーボンですが、カーボンとは鉄よりも軽く(鉄の約25%の重さ)、にも関わらず10倍の強度をもちます。ゴルフクラブやテニスラケット等、軽度と硬度が必要とされるような領域で重宝されています。所謂「軽くて丈夫な素材」です。しかし、カーボンは加工が難しく、それを成形するための製造コストが高いというデメリットがありました。
しかし、その成形加工の課題を、3Dプリンティング技術で容易にしたのが、「Mark One」です。価格は4,999ドル(約50万円)。家庭用3Dプリンターの課題としては、
・精度(精密さ)
・造形スピード
・強度
等がありますが、その中の一つの強度がカーボンによって満たされるのであれば、通常なら造形しても強度の問題で壊れる恐れがある等の心配があった造形物も、実際に利用できるオブジェクトとして家庭用の3Dプリンターで出力して実用品として使えるようになり、造形物の可能性はもっと広がっていくのかもしれませんね。

今すぐ使える低価格な3Dプリンターが欲しければ「ダヴィンチ1.0」

家庭用3Dプリンターの低価格化が止まりません。今回ご紹介する3Dプリンターは、台湾のメーカーXYZプリンティングが製造する「ダヴィンチ1.0」です。価格は69,800円、フィラメントは専用カートリッジで3,280円となっています。アメリカでは$499(約51,000円)で販売されているようです。では、現在公開されている情報をベースにみていきましょう。

基本スペック

  • 造形方式:FDM方式(熱溶解積層法)
  • 最大造形サイズ:200mm x 200mm x 200mm
  • 本体サイズ:幅468mm x 高さ558mm x 奥行き510mm
  • 重量:約23.5kg
  • 積層ピッチ
    -FINE:0.1mm
    -STD:0.2mm
    -SPEED:0.3mm
    -ULTRA FAST:0.4mm
  • 液晶パネル:カタカナによる日本語表示に対応。
  • プリンターヘッド:シングルノズル
  • プリントスピード:150mm/s
  • 利用フィラメント径:1.75mm
  • 利用フィラメント:ABS
  • ビューワーソフト:XYZware
  • 対応データ:STL/XYZ
  • 対応OS
    -WindowsXP/7以降
    -Mac OS X 10.8以降

フィラメント

  • 様式:専用カートリッジ
  • 素材:ABS
  • 価格:3,280円
  • 重量:900g(カートリッジ全体)
  • 内包フィラメント重量:600g
  • 1Kgあたりの価格:約5,000円

面倒な設定や調整等が必要無く、すぐに使える事がメリットである専用カートリッジ式の3Dプリンターとしては、比較的コストパフォーマンスの良い物なのではないでしょうか。同様に専用カートリッジ式のCube2ndジェネレーションは、内包フィラメントが350g程度で6,300円なので約17,000円/kgであることを考えると、5,000円/kgのお得さは理解いただけると思います。

販売

  • Web通販
    -Amazon
    -楽天
    -ビックカメラ
    -Yahoo!ショッピング
  • 店頭
    -ビックカメラ有楽町店
    -ビックカメラ新宿西口店
    -ビックカメラ池袋本店パソコン館
    -コジマ×ビックカメラ梶ヶ谷店
    -ソフマップ秋葉原本館 

組立式ではなく完成品で、カートリッジ形式ということは、購入後難しい調整や設定等も不要ですぐに使うことができると思います。実際に使っていないので、よくあるフィラメント詰まりや出力ミス等がどの程度起こるのかはわかりませんが、保障も本体は1年ついているので、公開されている情報から判断すると、初心者にとっては総合的にオススメな製品かと思われます。

家庭用3Dプリンターで実際に乗れるカヤックを作った男

3Dプリンターでまず作る物としたら、ちょっとしたコップ等の器やアクセサリーやフィギュア等、手に取れるくらいの大きさの物を創造すると思います。しかし3Dプリンターで、実際に乗ることができるカヤック(カヌー)を作ってしまった人がいます。それも、高額な3Dプリンターではなく、安価な家庭用3Dプリンターを改造して、カヤックを作ってしまいました。

実際に人が乗れる大きさのカヤックを家庭用3Dプリンターで作れるの?と思ってしまいますが、このカヤックを作ったJim Smithさんは、28個のパーツに分けて、そのパーツを一つづず出力して、最後はボトルとシリコンコーキングを用いて一つのカヤックを作り上げました。シリコンコーキングは、接合部分の隙間を埋める防水性と気密性を高めるための充填素材です。3Dプリンターで出力した個々のパーツを普通にボルトで繋いだだけでは、隙間ができたりそこから浸水したりするので、そのつなぎ目をシリコンコーキングを用いて気密性と防水性を高めたということです。

約26.3KgのABSフィラメントを用いて、出力には42日もかかったようです。26.3Kgのフィラメントっていくらくらいするのでしょうか?安価なフィラメントであれば、3000円/Kgで販売されています。もしこのような安価なフィラメントを用いたら、
3,000円×26.3Kg=78,900円
程度になります。もしこれを専用カートリッジ式のフィラメントで有名なCubeで作成した場合、17,000円/kgもしてしまうので、
17,000円×26.3Kg=447,100円
にもなってしまいます。

もちろん、Cubeでは今回のカヤックのパーツであっても、造形サイズ的に出力できないので、Cubeを用いてカヤックを作ることはできないのですが、やはりこう考えると、専用カートリッジ形式の3Dプリンターよりも、少しでも安価なフィラメントを自由に使える3Dプリンターの方がいいですよね。ただし融解温度の調整等、ある程度の専門知識がないと、安くカヤックを作るまでのことはできないかもしれませんが。
それにしてもこの情熱?バイタリティ?はすごい!熱意さえあれば、なにでも3Dプリンターで作れてしまいそうですよね。