カテゴリー別アーカイブ: 3Dプリンター 技術

3Dプリンターの技術は日進月歩です。衣食住も3Dプリンターで作れたり、もはや3Dプリンターで作れない物を探す方が難しいのかもしれません。

家庭用3Dプリンターで実際に乗れるカヤックを作った男

3Dプリンターでまず作る物としたら、ちょっとしたコップ等の器やアクセサリーやフィギュア等、手に取れるくらいの大きさの物を創造すると思います。しかし3Dプリンターで、実際に乗ることができるカヤック(カヌー)を作ってしまった人がいます。それも、高額な3Dプリンターではなく、安価な家庭用3Dプリンターを改造して、カヤックを作ってしまいました。

実際に人が乗れる大きさのカヤックを家庭用3Dプリンターで作れるの?と思ってしまいますが、このカヤックを作ったJim Smithさんは、28個のパーツに分けて、そのパーツを一つづず出力して、最後はボトルとシリコンコーキングを用いて一つのカヤックを作り上げました。シリコンコーキングは、接合部分の隙間を埋める防水性と気密性を高めるための充填素材です。3Dプリンターで出力した個々のパーツを普通にボルトで繋いだだけでは、隙間ができたりそこから浸水したりするので、そのつなぎ目をシリコンコーキングを用いて気密性と防水性を高めたということです。

約26.3KgのABSフィラメントを用いて、出力には42日もかかったようです。26.3Kgのフィラメントっていくらくらいするのでしょうか?安価なフィラメントであれば、3000円/Kgで販売されています。もしこのような安価なフィラメントを用いたら、
3,000円×26.3Kg=78,900円
程度になります。もしこれを専用カートリッジ式のフィラメントで有名なCubeで作成した場合、17,000円/kgもしてしまうので、
17,000円×26.3Kg=447,100円
にもなってしまいます。

もちろん、Cubeでは今回のカヤックのパーツであっても、造形サイズ的に出力できないので、Cubeを用いてカヤックを作ることはできないのですが、やはりこう考えると、専用カートリッジ形式の3Dプリンターよりも、少しでも安価なフィラメントを自由に使える3Dプリンターの方がいいですよね。ただし融解温度の調整等、ある程度の専門知識がないと、安くカヤックを作るまでのことはできないかもしれませんが。
それにしてもこの情熱?バイタリティ?はすごい!熱意さえあれば、なにでも3Dプリンターで作れてしまいそうですよね。

3Dプリンターでオレオを楽しく食べる。いずれは3Dプリンターお好み焼き?

毎年この季節にアメリカのテキサス州オースティンで開催される映画と音楽の祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」に、3Dプリンターとオレオのマッシュアップ企画が登場しました。
オレオはみなさんもご存知かと思いますが、ナビスコが製造/販売するサンドイッチ状のクッキーで、白いクリームを2つのチョコレートクッキーではさんだものです。
日本国内では、沢口靖子さんがテレビCMしていたアレか、と記憶していたのですが、沢口靖子さんがCMに出演していた商品はリッツでした。1912年に発売されたオレオはアメリカで最も売れているクッキーだそうです。オレオには、色々な食べ方があるみたいですね。

今回SXSWに登場したオレオの新しい食べ方を提案した3Dプリンターは、オレオの片面にカラフルなクリームを塗って、もう一つのオレオではさむまでの作業を3Dプリンターの原理で機械的に制御するプロダクトです。カラフルなクリームが使われていますが、自宅でたこ焼きパーティー、みたいな感じでしょうか。と考えると、3Dプリンターの原理を活用したたこ焼きやお好み焼きマシーン、みたいなのもいずれ登場するかもしれませんね。もんじゃとか。

空間にジェスチャーで3Dモデルを作って直接3Dプリントする凄い技術が登場!

グーグルグラスやテレパシー等のグラス型ウェアラブルコンピュータが注目されていますが、今回紹介するのはキックスターターで約2,000万円の支援金を集めた「SpaceGlasses META」です。METAはサングラスのようなメガネに、3Dのヘッドセットが組み込まれたグラス型ウェアラブルコンピューターです。MATAはMicrosoftのKinectのようにジェスチャー等をキャプチャすることができ、実空間にハンドジェスチャーで3Dオブジェクトデータを直接描き出すことができます。段階を経た開発が進められているようですが、最新のPRE Orderを受け付けている最新モデルは、初期モデルより大幅にデザインが洗練され、サイズ等もコンパクトになっているようです。ちなみに価格は、
・META Pro:$3,650(約36万円)
・META.01 Developer Edition:$667(約6万7千円)
となっています。
以下のビデオの0:12(12秒)あたりで、3Dモデルを作成して、そのデータをそのまま3Dプリンターに移動して出力している様子が映し出されていますが、このようなウェアラブルコンピューターと3Dプリンティングは相性のよい物なのかもしれません。

2014年2月に特許が切れた3Dプリンターのレーザー焼石法とは?

2014年2月にレーザー焼石法の特許が切れることを先日当サイトでもお伝えしましたが、ではそのレーザー焼石法とは何なのでしょうか。
レーザー焼石法/粉末焼結積層造形法/粉末固着法/粉末焼結式方 等、様々な呼び名がありますが、世界的にはSLS(Selective Laser Sintering)法と呼ばれています。※以降SLS法と記載。

SLS法の魅力は、FDM方式(熱溶解積層法)や光造形法等の他の造形方式がプラスチック等のある一定の成形材料に限定されているのに対して、SLS法では樹脂材料やセラミック、金属等も造形することができます。造形方法に関しては、言葉や図で説明するよりも、動画で見た方が分かりやすいと思います。3D Systems社の動画がとても分かりやすいので紹介させていただきます。1986年にテキサス大学でJoseph J. Beaman教授らを中心にSLS方式の研究プロジェクトが始まり1987年にはSLS方式による造形装置を製造販売する目的でDTM社が設立されました。そのためSLS方式に関する特許はDTM社が保有しており、独占使用権が与えられていました(2001年8月にDTM社を3D Systems社が買収)。
今回期限切れとなるSLSの特許は基本的な物となっており、そのベースとなった特許技術の上に、様々な技術が日々加えられて改良されSLS方式の3Dプリンターは進化してきました。その為、現時点で実現しているSLS方式の3Dプリンターを誰もが作れるというわけではないですが、このような事はFDM方式(熱溶解積層法)の3Dプリンターでも同様であり、昨今のFDM式3Dプリンターの低価格化や技術の進化と照らし合わせると、これから数年内にSLS方式の3Dプリンターが低価格化し手軽に入手できるようになると思われます。

3Dプリンターでスマホを生産!組立式携帯電話Project Ara

最近Googleがモトローラをレノボに売却したニュースが騒がれています。2012年に125億ドルでGoogleはモトローラを買収しましたが、2年もたたずに29億1,000万ドルでレノボに売却しました。約1兆円も損をしているように見えますが、モトローラの保有していた特許等はGoogleが所有し、レノボは特許利用をライセンスするという形になっているようです。
この特許と併せて注目を集めているのが、モトローラのR&D(研究開発)部門のATAP(Advanced Technology and Projects)です。このATAPもGoogleに残ることになりました。約100億ドルの価値は、モトローラの保有していた特許とこのATAPということになるのでしょうか。ではこのATAPとは何か?現在のATAPを率いるRegina Dugan(レジーナ・デューガン)氏は、かの有名な米国のマッドサイエンティスト集団?DARPAの長官を3年間務めた人物です。DARPAとは米国の国防総省向け軍事テクノロジを扱う米国防高等研究計画局。DARPAではインターネットの元となったARPANETやGPSなども生み出しています。安倍政権においても、日本版DARPAとして「革新的研究開発推進プログラム」(ImPACT)は550億円の予算が投じられたりしています。
そんなATAPのプロジェクトで最も有名なものが、組立式の携帯電話プロジェクト「Project ARA」です。Project araこのProject ARAとは何か?携帯電話で、カメラは高機能な物が欲しい、バッテリーは長時間持つ物が欲しい、ストレージが大きいサイズの物が欲しい、Bluetoothはいらない等、コモディティー化した携帯電話市場は様々なニーズが細分化されてきています。そのような時代背景を見越して、ユーザーが自分の欲しいスマホを組み立てて自分好みの携帯電話を作る事ができるプロジェクトが「Project ARA」です。またAraと同様のコンセプトを展開するオランダ人デザイナー、Dave Hakkens 氏が展開するプロジェクト「Phonebloks」 との協力も発表されています。PhoneBlock

この取組の中でも3Dプリンティング技術が活用されていくようです。3D Systemsはこのモジュール式組み立てスマホプロジェクトのProject ARAにおいて、様々な技術協力をする契約を結びました。マルチマテリアルプリントの能力や造形速度を向上させるなどして、新たなARA向けの製造ラインを立ち上げる予定となっています。Androidがソフトウェアのオープン化を推進するように、ハードウェアのオープン化という発想が今後広がっていくのかもしれません。もちろんモノづくりのオープン化を推し進める要素の一つとして、3Dプリンティング技術が活用されるのは間違いありません。マッドな科学技術が、私たちのライフスタイルをより楽しく、便利で、面白い物にしていく。その中心の一つに3Dプリンティング技術が存在していることを、日々実感せずにはいられません。近い将来、好みの機能/好みのデザインのあなただけのスマートフォンが自宅で作れるようになるのかもしれません。

3Dプリンターで料理を作る「Foodini」

3Dフードプリンティングは、今後3Dプリンティング技術を活用したジャンルの一つになるかもしれない。以前NASAが宇宙食として研究していると報道されたが、一般の家庭で使える家庭用フード3Dプリンターが2014年の中ごろにも発売されるようだ。映像を見ると、なるほどという感じだが、簡単に説明するとしたら、マヨネーズやケチャップ等で文字を書いたりするが、その行為をプログラミングで自動化して、平面だけではなく高さを持たせた、ということだろうか。Foodini普通の料理よりは、クッキーやケーキ等を作る方がイメージがわきやすい。もしかしたら将来的には、有名なパティシエ等のキッチンには3Dフードプリンターが置かれるようになるのかもしれない。ただ、個人的には、料理人によって職人技で作られた料理の方がいいかも。家庭用3Dフードプリンターなら、日々の料理を助けるという意味でありかもしれない。近々テレビショッピング等で紹介されていても不思議ではないような気がする。本当の意味での3Dプリンティングは、形状だけではなく、味や色、栄養分等もプログラミングによって作り出せるようになった時だろう。そういう意味では今回紹介した「Foodini」は、とりあえず形状を造形するだけのものか?FoodiniFoodiniを開発するNatural Machineによると、価格は1,360ドル。日本円で13万円という価格は、ヘルシオ等の高級電子レンジと近い価格帯。シャープ等の国内白物家電メーカーも研究開発しているのかもしれない。

3Dプリンターの先を行く4Dプリント

安堂ロイドでキムタクが使っているのが5Dプリンター。先日米軍が4Dプリンターの研究をしていることをお伝えしたが、より4Dプリンターのコンセプト、将来性を理解できる動画を紹介したい。時間軸に合わせて形状を変えたり、それ自体が自律的に特定の形状に変形する。この技術を極めれればあらゆる形状を自由に作り出せるのではないだろうか。4d printerこの技術はむしろ3Dプリンティングで何かの形状を造形するというよりは、その構造体自体が特定の形状に自由に変形するという点で、3Dプリンティングの延長としての4Dプリンティングというよりは、全く別の概念なのかもしれない。この構造体が極小化すれば、写真のように様々な衣料を形作り、その元となる構造体として活用されるのかもしれない。

安堂ロイドの5Dプリンター

ふとテレビをつけていたら、5Dプリンターとかいう言葉が耳に飛び込んできた。何かと思えば、テレビドラマ「安堂ロイド」でキムタクこと木村拓哉さんが演じる安堂ロイドは、5Dプリンターという技術でタイムトラベルをしているらしい。ドラマを観ていないので、詳しいことは分からないが、おそらく今年の3Dプリンターブームを背景にしたテレビドラマ上での演出だろう。
堺雅人主演で社会現象となるまでの人気をはくした半沢直樹の後枠で放送されるだけに、なんとしても成功させるには、このような要素もうまく取り入れていくのも重要なのかもしれない。Androidに3Dプリンターが、安堂ロイドと5Dプリンター。
5Dプリンターはよしとして、ちなみに4Dプリント技術というのは既に研究されているらしい。アメリカ軍の研究所が、4Dプリンティングを研究する3つの大学に約8,500万円の補助金を出し、研究を促進しようとしている。4Dとは何か?4次元とは、一般的には、空間における次元が4つあることをさす。米軍が研究しようとしている4Dプリンティングは3次元の立体構造に動きという概念を加えた物のようだ。
何等かのきっかけによって、形状や性質を変化したり自律的に組みあがったりするような物を作り出す技術。自律的に組みあがると聞くと、トランスフォーマー等をイメージするかもしれない。となると、軍が興味を持つのもなんとなくわかる。
4d_printMIT(マサチューセッツ工科大学)のスカイラー ティビッツ氏は、水等の液体に触れると形状を変える素材の3Dプリントに成功しているという。
このような技術革新を繰り返していくことにより、3Dプリンティング技術は4Dプリンティングに進化して、いずれはあなたの元にキムタクが時空を超えてやってくる日が来るのかもしれない。

3D PRINTSHOW 2013

日本国内でも2013年は3Dプリンターが大いに盛り上がったが、やはりこのような海外の動向を目にすると、日本はまだまだと思ってしまう。3Dプリンティングはアメリカの物、というようなイメージを持ちがちだが、以下の動画を見る限り、欧州でもかなり盛り上がっているように見える。3Dプリンティング技術は、今後数年で技術的な成熟を迎えると思われるが、そのような状況において、日本はどのような存在感を示すことができるだろうか。現時点では明らかに、日本は世界の3Dプリンティング市場からは遅れをとっていると思われるが、市場が成熟した時に、これらの技術を生かして、文化を生み出すのが得意なのが日本という国なのかもしれない。3D-PRINTSHOW-2013マンガやアニメ等の文化において世界の最先端を走る日本としては、このようなクリエイティブば領域においては、かなりの存在感を示すことができるようになるだろう。ただし、これはマンガ等をはじめとしたカルチャーが世界的に評価されているにおいての話だ。もしまた何かの新しい概念が現れた時に、日本としてどのような存在感がしめせるのかは現時点ではまだ誰にもわからない。しかしここ数年は、日本のカルチャーが3Dプリンティングに対して非常に親和性が高いことは間違いないだろう。

3Dプリンターで音楽を奏でる

今度はなんと、3Dプリンターで音楽を生み出してしまうプロジェクトが登場した。音楽を生み出すというのはちょっと飛躍した言い回しかもしれませんが、なんと3Dプリンターで実際に音が流れるレコードを作るプロジェクトが進んでいます。アメリカのサンフランシスコ在住の方が個人プロジェクトとして取り組んでいるのであるが、個人レベルでこのような取組を行ってしまうところが、アメリカのすごさなのかもしれない。以下の動画を見れば分かりやすいと思うが、音楽データから波形を読み取り、それを3Dプリンターでレコードとして出力している。
実際にレコードプレイヤーで再生すると、ちゃんと音楽が流れる。この動画を見ていると、レコードの原理がなんとなく理解できるかもしれない。さすがに家庭用の3Dプリンターでは不可能だが、ここまでの音質のレコードまでも作れてしまうのは驚きだ。実際に音楽が流れるレコードが作れるということは、それだけ3Dプリンターの品質が向上しているということだろう。音質が3Dプリンターの品質を表しているところが面白い。3d-printer-record
デジタルの進化やインターネットの普及により、音楽も全てデジタル化し、データ複製等が問題になったが、この取組は、デジタル化した音楽データを3Dプリンターでレコードにしてアナログ化するという逆の流れというのが面白い。そのアナログ音源の元データはデジタルデータということになるのだが。
音楽と3Dプリンターが結びつくということはあまりイメージできなかったが、今後も様々な想像もできない物を次々と3Dプリンターは作り出していくのかもしれない。