大手3DプリンターメーカーのStratasysが、複数の素材を扱えてフルカラーで出力できる3Dプリンター「Objet500 Connex3」を発表しました。ゴム素材/プラスチック/透明素材等を組み合わせて、同時にフルカラーで3Dプリントができる世界初の3Dプリンターとなっています。単一素材ではなく、複数の素材が出力できると、プラスチックとゴムを組み合わせた造形物等も出力することができ、より精細でリアルな物を造形することができます。これにより個別にパーツを出力して、後で組み立てをしたり、出力後に個別のパーツに塗装を行う等の必要がなく、組み立て部品をいきなり造形出力することができます。これまでのObjet Connexシリーズでも透明/不透明の素材、ゴム等の複数素材の同時出力に対応していましたが、Connex3は新たにマルチカラー出力に対応しています。なんと一度の造形出力で最大46色を同時に使用することができます。シアン/マゼンダ/イエローの3色を組み合わせることにより、フルカラー出力を実現しているようです。これこそまさに私たちがイメージしている3Dプリンターではないでしょうか。「Objet500 Connex3」は業務用のハイエンド3Dプリンターとなっており、価格は約3,400万円と高額ですが、市場の成長と技術の進化により、いずれ必ず家庭用3Dプリンターで、このクオリティの造形が可能となる製品が私たちも入手できるようになるはずです。
このような技術革新が著しい3Dプリンティング市場ですが、ではこの業界をリードする二つの巨星、3Dシステムズ社とストラタシス社とは、どのような企業なのでしょうか。
Stratasys(ストラタシス)は、業務用のハイエンド3Dプリンターを製造販売するメーカーですが、昨年は家庭用3DプリンターのMakerbot Replicatorを製造販売するベンチャー企業Makerbot社を買収したり、3Dプリンティング市場に積極的な投資も行っています。「Objet」シリーズは、もともとイスラエルのObjet社を2012年にストラタシスが買収して現在に至っています。
一方の3Dシステムズ社は、Zプリンターで有名なZcorp社を2011年に買収しています。この大手2社が今後の3Dプリンティング市場を当面の間牽引していくことは間違いなさそうです。この2大カンパニーに、クラウドファウンディング等を活用したベンチャー企業が新たなアプローチの3Dプリンターや3Dスキャナー等の製品を投入してくるような感じでしょうか。しかし大手2社はその資本力を背景に、Makerbot社の買収のように、次々と3Dプリンティング関連のベンチャー企業を買収していくのかもしれません。では、改めて大手2社のポートフォリオを比較してみましょう。
3Dシステムズ社 | ストラタシス社 | ||
3Dプリンター | 業務用 | ProJet/Zプリンター | Objet |
家庭用 | CUBE | Makerbot Replicator | |
3Dスキャナー | 業務用 | Z Scanner | - |
家庭用 | Senseシリーズ | Makerbot Dezitizer | |
オンラインコミュニティー | Cubify | Thingiverse | |
フィラメント領域 | Village Plastics Co | FDM Nylon 12 |
|
OEM/パートナー | DELL | HP |
上記のとおり、買収等で事業規模を拡大してきた両社のポートフォリオはまさに拮抗しています。この両社に食い込む新たなプレイヤーが出現するのか、それともこの2社が次々とベンチャー企業等を買収して3Dプリンティング市場を牛耳っていくのか、今後も目が離せない動向です。ただ、この領域に日本企業の存在感が薄いことはとても残念なこです。3Dプリンティング市場において世界で勝負できる日本企業が登場することを祈るばかりです。それは、ハードウェアだけに限らず、ソフトウェアやサービス、コンテンツ等、日本企業が存在感を示すことができる領域はきっとあるはずです。