カテゴリー別アーカイブ: 3Dプリンター 市場

2012年は3Dプリンター元年と言われ、2013年はその市場が一気に拡大した一年となりました。3Dプリンターには過度な期待が寄せられている側面もありますが、市場は着実に成長していっています。

ついにここまで来た!3Dプリンターのドキュメンタリー映画が登場!

数年前に「Social Network」という、デヴィット・フィンチャーが撮影したFacebookを題材にした映画を見た人も多いと思います。昨年は、アシュトン・カッチャーがスティーブ・ジョブスを演じて話題になった「Steave Jobs」を見た人おいるかもしれません。私も観ました。古くは、若き日のビル・ゲイツとスティーブ・ジョブスを描いた「バトル・オブ・シリコンバレー」という映画もありました(凄いタイトルですね)。ITの世界は時に劇的であり、映画の題材としても取り扱われる事が多い物です。邦画なら孫正義の映画があってもおかしくないと思うのは私だけでしょうか。
そのような中で、なんと今回は、3Dプリントの世界がドキュメンタリー映画になってしまいました。South by Southwest(SXSW)の映画祭で3/9に公開されたこの3Dプリンタームービーは、MakerBot社のブリー・ベティス氏や、キックスターターで多くの支援金を集めたFormlabsの共同創業者であるマクシム・ロボフスキー等、この業界に興味のある人なら耳にしたことがある人物が数多く登場します。「MAKERS」の著者として有名な「WIRED」誌元編集長のクリス・アンダーソンや、現編集者であるマイケル・キャロアとクリフ・カンも登場しています。これまでITの世界には、エポックメイキングな歴史を動かす出来事が何度かありました。それはIBMであったり、Appleであったり、Microsft、Google、Facebook等、歴史に名を残す企業やサービス、それを成し遂げた創業者等でもありました。そして次のエポックメイキングな事象として3Dプリンティングが注目されていることは誰もが気付いていることでしょう。制作は、ビデオゲームをテーマにしたドキュメンタリー映画「The King of Kong」のプロジェクトにも参加していたルイス・ロペス氏とクレイ・トゥイール氏。もしあなたもこの歴史のど真ん中にいるのであれば、この映画を見て未来を予見してみてもよいのかもしれません。3Dプリンターが映画化される時代が来たとは、感慨深い物です。

3Dプリンターの日

11月22日は「いい夫婦の日」。当時の財団法人余暇開発センター(現、財団法人日本生産性本部)が、夫婦で余暇を楽しむライフスタイルを提案することを目的として11月22日をいい夫婦の日として提唱したのがはじまりだそうだ。
そんな感じで、3Dプリントの日(3D Printing Day)というのが、今回12月3日として制定?されたようだ。何故12月3日かというと、12月(December)の頭文字Dと日付の3で12月3日が3Dプリントの日ということらしい。
これを提唱したのが、アメリカのGE社。GEはジェット機のエンジン等の量産部品を3Dプリンターで造ったり、3Dプリンティング技術を積極的に現場に取り入れているリーディングカンパニー。geGEは、モリス・テクノロジー社を買収して、3Dプリンティング技術の活用/拡大を進めたりもしている。
はたしてこの12月3日は3Dプリントの日というのは将来的に根付いていくのだろうか。

3Dプリンター市場は2019年に3,500億円規模に成長

将来的にどの程度まで3Dプリンター市場が成長するかの試算がこれまでにも何度か様々な調査機関から発表されてきたが、今回はアメリカの調査会社SmarTech Markets Publishingによって発表された。2014年に1,400億円、2019年に3,500億円の成長を予測している。調査対象は、自動車/航空宇宙産業/試作品/フィギュア/アクセサリー/スマホケース/医療関連等。調査対象企業は、3D SystemsやStaratasys等のプリンターメーカー、関連ソフトウェア販売会社等。
3,500億円と言われてもぴんと来ないかもしれないが、いったいどれくらいの市場規模なのだろうか?

  • 道の駅が1,000駅で3,500億円。
  • コンビニのファミリーマートやニトリの連結売上高が3,500億円。
  • 漬物の市場規模が3,500億円。
  • 2011年のエステ市場が3,400億円。
  • 国内の電子書籍サービス市場が、2010年が640億円で、2015年が3,500億円と予想。

このような物と比較すると、全世界で2019年に3,500億円という市場規模をどう見るべきだろうか?

Etsyに3Dプリンター造形品が続々

近年のモノづくりブームの中心にあった一つのサービスとしてEtsyはみなさんご存知のことだろう。そんなEtsyに3Dプリンターで作成した物がたくさん登録されている。Etsyは会員数が約1,500万人という世界最大の個人間手作りマーケットプレイス。そう考えると、3Dプリンティングとは相性がよいのかもしれない。
最近では国内でもヤフーオークション等で、3Dプリンターで造形したアクセサリーやオブジェクトを販売している人もいる。またFrilやメルカリ、あのLineもラインモールを開始するなど、個人間取引が盛り上がってきている。BASEやStores.jp等、個人がスマホで簡単にECサイトを開設できるサービスも大人気だ。となると、3Dプリンターを用いて価値のあるものを作り出せれば、このようなプラットフォームを使って、手軽に作成した物を販売できるようになるだろう。etsy
しかしこのEtsyに投稿されている物を見てみると、みなさんもThingiverse等で見覚えのあるデータの造形品等もいくつか投稿されている。これはデータを作成した本人が投稿した物なのだろうか?それとも、データ自体の商用利用がOKな物がEtsyに登録されているのだろうか。
今後3Dプリンターの性能が向上していけば、個人でもクオリティの高いフィギュアやアクセサリー等の製造が可能になると思われる。それらが、このような個人間マーケットと紐付いた時、3Dプリンティング市場はまた一歩大きく前進するのかもしれない。しかしその前に、作成されたデータの権利等のルールが整理されないと、健全な市場は形成されないのかもしれない。

3Dプリンターが流行語大賞に?

毎年この時期になるとメディアを賑わすのが、その年の流行語大賞。その年に流行った事象や製品、言葉やサービス等がノミネートされて表彰される。そんな今年の流行語大賞に3Dプリンターがノミネートされている?だって地上波のゴールデンタイムに、ビートたけしが「3Dプリンターだってよ~」って語るテレビCMが流れるご時世なんで。
玩具メーカー大手のタカラトミーの「人生ゲーム」は、誰もが知っている国民的なボードゲーム。この人生ゲームのシリーズとして11月14日に「人生ゲーム オブザイヤー」が発売される。価格は3,990円で最大6人で遊べる。「人生ゲーム オブザイヤー」は人生ゲーム同様、ルーレットを回してマス目を進む、すごろく形式のゲーム。受験/就職/結婚等の人生の節目のイベントを経てお億万長者を目指す「人生ゲーム」に、今年を象徴する事象等をフィーチャーした2013年バージョン。例えばアベノミクス/オリンピック/富士山/予備校教師/海女さん等、誰もがイメージできる要素が含まれている。「人生ゲーム オブザイヤー」は現代用語の基礎知識の読者審査員のアンケートをもとにノミネート語が選出されてトップテンと年間大賞語が選ばれる「ユーキャン新語/流行語大賞」とコラボレーションを行なっている。jinseiそんなゲームを左右する「トレンドカード」の中に、なんと「3Dプリンター」が入っているようだ。その他には「パンケーキ」「4Kテレビ」「ご当地キャラ」などもあるようだ。パンケーキと3Dプリンター。。。
今年の年末や来年のお正月に親戚や親しい人が集まってこのゲームで2013年を振り返ったりするともりあがるだろう。もしくは20年後等にこのゲームをみんなでやったとき、あー、2013年はあんなので盛り上がってたなー等、なつかしんで楽しんだりすることができるかもしれない。そんな20年後に20年前の2013年を振り返った時、3Dプリンターは、あの時が3Dプリンター元年だったんだなー、と振り返るのか、そんな一時のブームもあったなー、と懐かしくふりかえるのか、いったいどうなっているんだろう。

教育機関用全自動3Dプリンター

3Dプリンターが様々な市場に登場し始めているが、今度は学校等の教育機関用の全自動3Dプリンターが登場した。私たちの世代は、技術家庭という科目が中学生の時にあった。今でもあるのだろうか?もし今でもあるのなら、まさにそのような科目に3Dプリンターはぴったりかもしれない。では、学校向けの3Dプリンターとはどのような物だろうか。3Dプリンターを所有する多くの学校を周り話を聞いたのだが、何度も何度も言われたのは、先生が同じパーツをたくさんプリントしなければならないという問題点についてだったという。従来のプリンターだったら、これは、ソフトウェアで作ったパーツをロードして、プリントを開始して、数時間後に戻ってきてパーツを取り出し、またプリントを開始するという作業を意味する。生徒30人分のパーツを洗浄して、プリントを繰り返すのだ。
このプロジェクトを進めているNew Valence Roboticsは、特殊なソフトウェアとハードウェアを3Dプリンターに追加することによりプリントジョブのキューを保存できて、完成したオブジェクトを自動で取り外す機構が付いている。いちいち完成したら、完成物を取り外して、次の出力のセットをする等の手作業を省くことができ、一旦設定すると、あとは自動で次々とプリントアウトを続けてくれる。確かに3Dプリンターは一つの物を出力するのに、数時間かかる場合もあるので、ずっとその間3Dプリンターの前で待っている訳にもいかず、かといって、その場を離れていたら、実は数時間前に既に完成していた、等の時間の有効活用が難しい。教育機関等で、多くの出力をくりかえしたり、ハードに使いこなす場合には、うれしい機能だ。

家庭用3Dプリンターの現状

昨今のモノづくりブームで、3Dプリンターに関するニュースを目にしない日はない。大手家電量販店で家庭用3Dプリンターの発売が開始されたり、国産の3DプリンターScoovoが登場したりと実際に様々な動きが出始めている。では、実際に家庭用プリンター等はどの程度現時点で普及しているのだろうか?そのような調査を、インターネットコムとgooリサーチが行った。全国の10代から60代以上のインターネットユーザー約1,000人に3Dプリンターの利用動向等を調査したところによると、3Dプリンターの認知度は74.9%、このうち21.2%の人が「3Dプリンタ代行サービス」までを知っていた。しかし実際に利用しているユーザーは2.7%。利用したことがある人は会社やイベント、学校等での利用と回答しており、まだまだ家庭用としては引き続き敷居が高いという結果であった。では3Dプリンターに興味はあるが、購入にまで至っていない人の意見としては、価格/手間/精度などが理由のようだ。確かに現時点での家庭用3Dプリンターでは、ホームユースにしてはまだ10万円以上する場合が多く、10万円出すのであれば、大型液晶テレビが買えたりと、製品単体としての評価とすれば高価な感じがする。またやはり手間、精度等も現時点では家庭用として大きく普及するまでの物とはなっていない。当サービスにおいても、現時点おいては、週末よりも平日の方がアクセスが多く、これは個人的なホームユースのニーズというよりは、ビジネス視点でのニーズが高いということかもしれない。

では、一方モノづくりブームの先進国、アメリカではどういう状況なのだろうか?欧米では、DIYという言葉があるように、ホームセンター等で材料等を購入して自分で何でも作ってしまうという慣習がある。米国では自宅のガレージなどでものづくりをする人も多い。ヒューレットパッカードやApple等も最初は自宅のガレージ等から出発している。このような文化はアメリカ特有の物なのかもしれない。そこに最近の3Dプリンターブームが登場し、アメリカではこれまでにないモノづくりブームが起こっているようだ。あのMakerbotReplicatorのメーカーでもあるメイカーボットインダストリーズ社のCEO(最高経営責任者)、ブリー・ペティスさんは7年前まではなんと美術教師だったらしい。当時市場に出回っていた3Dプリンターが高価すぎたことをきっかけに友人と自作したことが現在のMakerbot社につながっている。この辺もまさにアメリカっぽいのかもしれない。日本にもこのような盛り上がりがくるためには、やはり家庭用の3Dプリンター市場が成熟していくことが重要かと思われる。

家庭用3Dプリンター

昨今の3Dプリンターブームで、3Dプリンターさえあれば、何でも造形できると勘違いされているむきもある。3Dプリンティングブームを理解するうえで、家庭用の3Dプリンターと、ハイスペックな3Dプリンターを区別する必要がある。“家庭用3Dプリンター”と聞いて、みなさんは何を思い浮かべるだろうか?CubeやMakerbotReplicatorやAfinia、最近ではScoovo等が家庭用3Dプリンターとしての市場を開拓している。ただ、日本国内で入手できて、安定的な動作を期待できる3Dプリンターとしては、Cubeが一歩リードしている感じだろうか。昨今ブームの家庭用3Dプリンターは、これまで米国の特定企業が保有していた3Dプリンティング技術の特許が切れて、様々なベンチャー企業が安価にて3Dプリンターを開発/販売し始めた事が大きい。一方、Stratasysや3D Systems等は1980年代から、工業製品向けのプロトタイプを作成するための3Dプリンターを比較的早いタイミングから市場に投入していた。これらの技術は比較的昔からある技術であり、それなりの金額を払えば、相当な3Dプリンターを入手することができた。ただ、ここ近年の大きな動きとしては、これらの大手プレイヤー、Stratasysや3D Systemsが、家庭用3Dプリンターという、ホームユースの市場に参入してきた事が大きい。3D SystemsはCubeをフィーチャーして、Stratasysは、MakerBot社を買収して、MakerbotReplicatorでこの市場を開拓し始めている。時間がたてば、工業製品を作成するような高価な3Dプリンターの品質レベルと、ホームユースの家庭用3Dプリンター市場と融合することが考えられるが、
それでにはまだしばらく時間がかかるだろう。現状の3Dプリンティング市場は、期待値が現実をうわまっており、この原因は工業製品向けの3Dプリンティング市場と、家庭用3Dプリンター市場が混同されていることにある。近い将来、これらは近づいて1つの市場になると思われるが、それまでの間、市場の健全な成長を期待したい。

3Dプリンティングは過度な期待のピーク期

アメリカの調査会社ガートナーが2013年9月3日に、毎年発表している「先進テクノロジーのハイプサイクル」の2013年度版を発表した。ハイプサイクルとは、ガートナーが2,000以上の様々な技術を98の分野に分類して、成熟度/成長度/企業メリット等を元に、それぞれの技術の成長性等の予測を図式化したもの。近年では、ゲーミフィケーション、AR(拡張現実)、クライドコンピューティング、NFC等が登場したことを記憶してる方も多いと思う。そのようなハイプサイクルの2013年度版に、「コンシューマー3Dプリンティング」が登場した。
hype_sycleコンシューマープリンティングは、過度な期待のピーク期にあるとされており、今後「幻滅期」を経てで5~10年後に普及に向かうと予測している。また、企業向けの3Dプリンティングは既に啓蒙活動期に入っており、数年後には生産性の安定期に入り普及していくと予測している。たしかに3Dプリンティングは過熱気味に報じられている側面もあり、家庭用3Dプリンターの市場がどこまで広がるかは意見の分かれるところだが、ガートナーは今から、5年から10年かけて普及に向かうと予測している。ちなみに3Dスキャナーは、現時点でテクノロジの黎明期にあり、ここ数年で、過度な期待のピーク期に入っていくと予測されている。

3Dプリンター業界に転職!

毎日3Dプリンティング業界のニュースが流れているが、この隆盛は雇用の領域にまでも影響をおよぼしはじめた。3Dプリンティングに興味のある人なら、何か自分で事業を興してみようかな、とか考えるかもしれないが、例えばこのモノづくりムーブメントにのって、景気の良い企業に転職して波に乗るというのもあるかもしれない。ただ単にこのブームに乗るというだけではなく、その市場に必要とされるだけの技術や見識、経験等が必要なのかもしれない。現在、ちらほらと3Dプリンタ関連のサービスエンジニアが積極的に募集とされているようです。3Dプリンターのハードウェアの世界的な大ブームに併せて、バランスが取れていないのが、ソフトウェアエンジニアや、コンテンツクリエイター。
3Dプリンターのブームを一過性の物と見るか、将来大きな市場ができあがる未来の市場と見るか、これから様々なソフトスキルを身に着けるに際して、3Dプリンティング市場は一つの大きな選択肢かもしれない。