作成者別アーカイブ: 3D CAD DATA.com

2014年2月に特許が切れた3Dプリンターのレーザー焼石法とは?

2014年2月にレーザー焼石法の特許が切れることを先日当サイトでもお伝えしましたが、ではそのレーザー焼石法とは何なのでしょうか。
レーザー焼石法/粉末焼結積層造形法/粉末固着法/粉末焼結式方 等、様々な呼び名がありますが、世界的にはSLS(Selective Laser Sintering)法と呼ばれています。※以降SLS法と記載。

SLS法の魅力は、FDM方式(熱溶解積層法)や光造形法等の他の造形方式がプラスチック等のある一定の成形材料に限定されているのに対して、SLS法では樹脂材料やセラミック、金属等も造形することができます。造形方法に関しては、言葉や図で説明するよりも、動画で見た方が分かりやすいと思います。3D Systems社の動画がとても分かりやすいので紹介させていただきます。1986年にテキサス大学でJoseph J. Beaman教授らを中心にSLS方式の研究プロジェクトが始まり1987年にはSLS方式による造形装置を製造販売する目的でDTM社が設立されました。そのためSLS方式に関する特許はDTM社が保有しており、独占使用権が与えられていました(2001年8月にDTM社を3D Systems社が買収)。
今回期限切れとなるSLSの特許は基本的な物となっており、そのベースとなった特許技術の上に、様々な技術が日々加えられて改良されSLS方式の3Dプリンターは進化してきました。その為、現時点で実現しているSLS方式の3Dプリンターを誰もが作れるというわけではないですが、このような事はFDM方式(熱溶解積層法)の3Dプリンターでも同様であり、昨今のFDM式3Dプリンターの低価格化や技術の進化と照らし合わせると、これから数年内にSLS方式の3Dプリンターが低価格化し手軽に入手できるようになると思われます。

3Dプリンターで作るiphoneスピーカー

3Dプリンターで簡単に作れる物としてスマートフォンケース等がありますが、Shapewaysにスタンド型のiphoneスピーカーが掲載されています。「Bugle iPhone」と名付けられたこの作品は、作り自体は非常にシンプルな物ですが、非常にアイデアに優れた物となっています。“Bugle”とは“らっぱ”を意味します。その名のとおりiphoneのスピーカー部分をはさみこむように装着すると、メガホンのような効果があると同時にiphoneスタンドとしても機能します。iphone speakeriphoneを立てかけて正面から音楽が聴けるのは便利なのではないでしょうか。インテリアとしてもおしゃれですね。電源を必要とするiphoneのスピーカーは数多く出ていますが、電源不要で装着するだけ。スペースもとらないので、持ち運びにも便利です。しかし現在この製品は販売していないようです。
Bugle – iPhone 5:Shapwways

一方こちらは、「Minimized Gramophone」。蓄音機を模したスピーカーといったところでしょうか。iphoneのケーブルをこのMinimized Gramophoneに通してiphone本体に差し込めばiphoneに装着できるデザインになっています。コード部分も挟み込める等、細かなところまでしっかりデザインされています。こちらは、
・iPhone 4/4S Minimized Gramophone:23ドル
・iPhone 5 Minimized Gramophone:22.9ドル
と、およそ2,300円でプラスチックでの出力に対応しています。Gramophoneいずれも家庭用の3Dプリンターで出力したいところですが、Shapewaysはデータ自体の販売は行っていない為、欲しいデータと出力する素材を選んで、Shapeways側で出力造形したものを自宅に送ってもらうという流れになります。3D CADを扱える人なら、メガホン型のiphoneスタンドくらいなら作成できるかもしれませんね。このようなアイデアを見ると、わくわくしてきます!

3Dプリンターでスマホを生産!組立式携帯電話Project Ara

最近Googleがモトローラをレノボに売却したニュースが騒がれています。2012年に125億ドルでGoogleはモトローラを買収しましたが、2年もたたずに29億1,000万ドルでレノボに売却しました。約1兆円も損をしているように見えますが、モトローラの保有していた特許等はGoogleが所有し、レノボは特許利用をライセンスするという形になっているようです。
この特許と併せて注目を集めているのが、モトローラのR&D(研究開発)部門のATAP(Advanced Technology and Projects)です。このATAPもGoogleに残ることになりました。約100億ドルの価値は、モトローラの保有していた特許とこのATAPということになるのでしょうか。ではこのATAPとは何か?現在のATAPを率いるRegina Dugan(レジーナ・デューガン)氏は、かの有名な米国のマッドサイエンティスト集団?DARPAの長官を3年間務めた人物です。DARPAとは米国の国防総省向け軍事テクノロジを扱う米国防高等研究計画局。DARPAではインターネットの元となったARPANETやGPSなども生み出しています。安倍政権においても、日本版DARPAとして「革新的研究開発推進プログラム」(ImPACT)は550億円の予算が投じられたりしています。
そんなATAPのプロジェクトで最も有名なものが、組立式の携帯電話プロジェクト「Project ARA」です。Project araこのProject ARAとは何か?携帯電話で、カメラは高機能な物が欲しい、バッテリーは長時間持つ物が欲しい、ストレージが大きいサイズの物が欲しい、Bluetoothはいらない等、コモディティー化した携帯電話市場は様々なニーズが細分化されてきています。そのような時代背景を見越して、ユーザーが自分の欲しいスマホを組み立てて自分好みの携帯電話を作る事ができるプロジェクトが「Project ARA」です。またAraと同様のコンセプトを展開するオランダ人デザイナー、Dave Hakkens 氏が展開するプロジェクト「Phonebloks」 との協力も発表されています。PhoneBlock

この取組の中でも3Dプリンティング技術が活用されていくようです。3D Systemsはこのモジュール式組み立てスマホプロジェクトのProject ARAにおいて、様々な技術協力をする契約を結びました。マルチマテリアルプリントの能力や造形速度を向上させるなどして、新たなARA向けの製造ラインを立ち上げる予定となっています。Androidがソフトウェアのオープン化を推進するように、ハードウェアのオープン化という発想が今後広がっていくのかもしれません。もちろんモノづくりのオープン化を推し進める要素の一つとして、3Dプリンティング技術が活用されるのは間違いありません。マッドな科学技術が、私たちのライフスタイルをより楽しく、便利で、面白い物にしていく。その中心の一つに3Dプリンティング技術が存在していることを、日々実感せずにはいられません。近い将来、好みの機能/好みのデザインのあなただけのスマートフォンが自宅で作れるようになるのかもしれません。

10,000円以下で買える3Dプリンター?3Dペンのまとめ

まだまだ手ごろな価格とは言えない3Dプリンター。いきなり10万円ものお金は出せない、そんな方には手ごろな価格で3Dプリンターの原理が理解できる3Dペンはオススメかもしれません。既に3Dプリンターを持っている方であれば、3Dペンの原理は簡単に理解できるでしょう。3DのCADデータでコンピューターを制御して造形するか、あなたのイマジネーションと手先の器用さで造形するか。通常の3Dプリンターだと、ソフトウェアのセットアップや、3Dプリンター本体の設定等が必要ですが、ペン型3Dプリンターだと、ペン内部で樹脂(フィラメント)を加熱して溶かして押し出せば、そのまますぐに使う事ができます。最初の加熱に数分かかりますが、その後はペンのボタンを押しながら溶けたフィラメントを押し出して空間に描くだけ。ペン内部で溶けて外部に押し出されたフィラメントは、平面だけではなく空間にも描くことができます。

3Dペンは、2013年にキックスターターに「3Doodler」が登場して、その後いくつかの3Dペンが登場しています。当初は3万ドル(約300万円)を集めようとしてキックスターターに登場した3Doodlerは、なんと234万ドル(約2億3,400万円)の支援を集めてしまいました。3Doodlerは、空中に絵が描けるというコンセプトで大注目を集めました。ちなみにdoodleは「イタズラ書きする」という意味。

それに続けと登場したのが「3Dsimo」。「3Dsimo」は3Doodlerよりも扱える素材が多く、PLA/ABS以外にもPVA/ナイロン等も使うことができます。しかし「3Doodler」同様にクラウドファンディングサイトIndieGoGoに登場した「3Dsimo」は目標額20,000ドル(約200万円)に対して、63万円しか集まらずプロジェクト成立には至りませんでした。そこで「3Dsimo」はデザインを変更して再度支援プロジェクトをIndieGoGoに立ち上げました。1,000ドル(10万円)をプロジェクト成立額として設定したプロジェクトは最終的に11,058ドル(約110万円)の支援を集めてプロジェクトが成立しました!細かな性能等も向上させたのかもしれませんが、やはりデザインが洗練された事が大きいのではないでしょうか。確かに新たな「3Dsimo」は、これなら欲しい!と思ってしまうようなデザインです。
その他にもいくつか3Dペンが登場しているので、以下にまとめてみます。

3Doodler

  • 3Doodler:アメリカ
    ・価格:99ドル(9,900円)
    ・材料:PLA/ABS
    ・寸法:180×24×24mm
    ・重量:200g
    ・http://the3doodler.com

3Dsimo-pen

  • 3Dsimo:チェコ
    ・価格:85ドル(8,500円)
    ・材料:PLA/ABS/PVA/ナイロン
    ・長さ:170mm
    ・重量:180g
    ・http://3dsimo.otherwise.cz

yaya 3d pen

  • YAYA 3D PEN:中国
    ・価格:120ドル(12,000円)
    ・材料:ABS
    ・寸法:190×48×43mm
    ・重量:150g
    ・http://www.3dyaya.com

wanhao 3d pen

  • WANHAO 3D pen:中国
    ・価格:137ドル(13,700円)
    ・使用材料:
    ・寸法:180×50×50mm
    ・重量:
    ・http://www.wanhao3dprinter.com

3Dペンは3Dプリンティングにおける一つのカテゴリーになっていくのでしょうか。

ついに来た!複数素材対応のフルカラー3Dプリンターが登場

大手3DプリンターメーカーのStratasysが、複数の素材を扱えてフルカラーで出力できる3Dプリンター「Objet500 Connex3」を発表しました。ゴム素材/プラスチック/透明素材等を組み合わせて、同時にフルカラーで3Dプリントができる世界初の3Dプリンターとなっています。単一素材ではなく、複数の素材が出力できると、プラスチックとゴムを組み合わせた造形物等も出力することができ、より精細でリアルな物を造形することができます。これにより個別にパーツを出力して、後で組み立てをしたり、出力後に個別のパーツに塗装を行う等の必要がなく、組み立て部品をいきなり造形出力することができます。これまでのObjet Connexシリーズでも透明/不透明の素材、ゴム等の複数素材の同時出力に対応していましたが、Connex3は新たにマルチカラー出力に対応しています。なんと一度の造形出力で最大46色を同時に使用することができます。シアン/マゼンダ/イエローの3色を組み合わせることにより、フルカラー出力を実現しているようです。Connex3-shoesこれこそまさに私たちがイメージしている3Dプリンターではないでしょうか。「Objet500 Connex3」は業務用のハイエンド3Dプリンターとなっており、価格は約3,400万円と高額ですが、市場の成長と技術の進化により、いずれ必ず家庭用3Dプリンターで、このクオリティの造形が可能となる製品が私たちも入手できるようになるはずです。
このような技術革新が著しい3Dプリンティング市場ですが、ではこの業界をリードする二つの巨星、3Dシステムズ社とストラタシス社とは、どのような企業なのでしょうか。
Stratasys(ストラタシス)は、業務用のハイエンド3Dプリンターを製造販売するメーカーですが、昨年は家庭用3DプリンターのMakerbot Replicatorを製造販売するベンチャー企業Makerbot社を買収したり、3Dプリンティング市場に積極的な投資も行っています。「Objet」シリーズは、もともとイスラエルのObjet社を2012年にストラタシスが買収して現在に至っています。
一方の3Dシステムズ社は、Zプリンターで有名なZcorp社を2011年に買収しています。この大手2社が今後の3Dプリンティング市場を当面の間牽引していくことは間違いなさそうです。この2大カンパニーに、クラウドファウンディング等を活用したベンチャー企業が新たなアプローチの3Dプリンターや3Dスキャナー等の製品を投入してくるような感じでしょうか。しかし大手2社はその資本力を背景に、Makerbot社の買収のように、次々と3Dプリンティング関連のベンチャー企業を買収していくのかもしれません。では、改めて大手2社のポートフォリオを比較してみましょう。

    3Dシステムズ社 ストラタシス社
3Dプリンター 業務用 ProJet/Zプリンター Objet
家庭用 CUBE Makerbot Replicator
3Dスキャナー 業務用 Z Scanner  -
家庭用 Senseシリーズ Makerbot Dezitizer
オンラインコミュニティー   Cubify Thingiverse
フィラメント領域   Village Plastics Co FDM Nylon 12
OEM/パートナー DELL HP

上記のとおり、買収等で事業規模を拡大してきた両社のポートフォリオはまさに拮抗しています。この両社に食い込む新たなプレイヤーが出現するのか、それともこの2社が次々とベンチャー企業等を買収して3Dプリンティング市場を牛耳っていくのか、今後も目が離せない動向です。ただ、この領域に日本企業の存在感が薄いことはとても残念なこです。3Dプリンティング市場において世界で勝負できる日本企業が登場することを祈るばかりです。それは、ハードウェアだけに限らず、ソフトウェアやサービス、コンテンツ等、日本企業が存在感を示すことができる領域はきっとあるはずです。

Photoshopで誰でも簡単に3Dプリンターデータを作成!

3Dプリンターは持っているけど、3DのCADデータが作れない。そんな人は以外と多いのではないでしょうか。でもフォトショップくらいなら使える、そんな人も多いはず。Adobe Illustratorのaiデータ等をそのまま立体化して3D CADデータにできれば、複雑でかっこいいロゴデザイン等も簡単に3Dプリンターで造形できるようになるのかもしれません。そんな市場の期待に合わせてか、AdobeがPhotoshop CCに3Dプリント機能を追加してきました。Photoshop CCとはCreative Cloudの略でクラウドから利用するフォトショップ。PhotoshopはCS3(Creative Suite3)から3Dオブジェクトを扱えるようになっており、CS4からは3Dオブジェクトの編集や加工もできるようになっています。
では今回アップデートされたPhotoshop CCの3Dプリンティングに関する主な機能を見ていきましょう。

  • 3Dプリンターデータの直接読み込み
    なんとPhotoshop CCでは、3Dプリンター用フォーマットの、STL/OBJ/3DS/Collada/KMZ等が直接読み込めるようになりました。3Dプリンターのフォーマットはいくつかあり、また3D CADデータや3D CGデータとの間での相互フォーマット変換等、データの扱いにはいくつかの課題がありました。
  • 3Dデータ解析
    読み込んだ3DデータをPhotoshop CC上で解析して、利用する3Dプリンターで綺麗に出力できるように各種パラメータを最適化してくれます。3Dオブジェクトデータをアナライズして、メッシュで欠けている箇所を塞いで修正してくれます。また造形中に必要となるサポートやラフト等の支持構造も自動で生成してくれます。
  • 使用する3Dプリンターの設定
    使用する3Dプリンターでの出力時間の概算も教えてくれたり、フィラメントの選択やヒートアップといった3Dプリンターの融解温度設定等、様々な3Dプリンター用の細かな設定や制御ができるようになっています。Photoshop CCとの連携に対応している3Dプリンターは、3D Systems社のCube、Makerbot社のMakerbot Replicator2と2X、ZCorp Full Colorプリンター等になります。
  • オンラインサービス連携
    オンラインの3Dプリント出力代行サービスShapewaysとの連携にも対応しており、サービスに連動したダイアログボックス等がメニューに実装されています。その他にもオンラインデザインポートフォリオサービスのBehanceにも対応しており、シームレスな3Dデータのアップロードも可能です。今後はDMMの3Dプリントサービス等とも連携していくのでしょうか。

3d print Photoshop

また注目すべき物として、アドビ社はXMLフォーマットを元にした3PP(3D printer profile files)という3Dモデルデータと3Dプリンターをつなぎ合わせるファイルフォーマットの開発を進めています。このフォーマットは、オブジェクトの体積や面積、フィラメント情報等を保有して、これらのデータによってPhotoshop CC側で、3Dオブジェクトデータを、出力する3Dプリンター毎に自動で最適化してくれます。現時点でも3Dプリンター用のデータは数多く出回っていますが、使用する3Dプリンターやフィラメントによって、細かな調整が必要な事はみなさんご存知かと思います。この調整や設定を間違うと、綺麗に造形できなかったり、フィラメント詰まりによって途中でエラーになったりしてしまいますが、これらのエラーが軽減されるのであれば、画期的なことかもしれません。

今回のPhotoshop CCのアップデートにおける3Dプリンティング機能についてまとめると

  • Photoshop CS3(Creative Suite)/CS4から3Dデータの作成/編集が可能になっている。
  • 今回のPhotoshop CC(Creative Cloud)から、3Dプリンティングの機能が多く実装されており、3Dプリンターデータの扱いや3Dプリンターとの連携が強化されている。
  • 他の3Dソフト等で作成された3Dプリンター用データを3Dプリンターに出力する前に、データの補正や最適化が容易にでき、綺麗な造形や、3Dプリンターでの出力ミス等を軽減できる。
  • テキストロゴ等なら、Photoshopの3D機能で簡単に作成でき、そのまま3Dプリンターやオンライン出力代行サービスを使って3Dプリントを楽しめる。

このような感じでしょうか。

ちなみに気になるPhotoshop CCのお値段ですが、

  • 単体サブスクリプション:年間プラン(月額払い)
    Adobe Photoshop CCのフルバージョンと一部のオンラインサービスを利用可能。
    共有およびコラボレーションのためのクラウドストレージ20GB。
    年間契約が必要(月額払い):2,200円
  • 単体サブスクリプション:月々プラン(柔軟に月ごとの契約開始/停止が可能なプラン)
    単体製品1つ(Adobe Photoshop CC等)を、1ヶ月単位の契約・料金で利用可能。
    好きな時にキャンセル可能(契約は自動更新):3,200円

となっており、また

  • 無償メンバーシップ
    すべてのアプリケーションの30日間体験版。
    一部のオンラインサービスを利用可能。
    2GBのクラウドストレージ。

という期間限定のお試し無料プランもあるので、気軽に試してみるのも良いかもしれません。

DTPの標準ソフトであるPhotoshopが今後より3Dプリンティングに対応していくとするならば、クリエイティブな業界にいる人たちは誰もが簡単に3Dモデリングができるようになるのかもしれません。そしてそれらの3Dデータが自由に流通し始めると、ハードウェアの進化と併せて、ますます3Dプリンティング市場は成長していくことでしょう。

2014年2月の重要特許期限切れで3Dプリンターが爆発的に拡大!

3Dプリンティング技術は特許の塊とも言われています。現在家庭用として普及している3DプリンターはFDM(Fused Deposition Modeling)法となっています。FDM方式(熱溶解積層法)とは、その名の通りフィラメントを熱で溶かしてZ軸方向に積層して造型する方式。この特許は3DプリンターのリーディングカンパニーStratasys社が保有していましたが2009年に特許期限が切れると、RepRapや3Dシステムズ社のCUBEやMakerbot社のMakerbotReplicator等が続々と登場して、一気にホームユースの低価格3Dプリンターが普及しました。特許が切れるまでは3Dプリンターは数百万円もした為、一般人が入手することはほぼ不可能でしたが、特許が切れた今では数万円の3Dプリンターも数多く登場し、多くの個人ユーザーがモノづくりを楽しんでいます。

そして2014年2月には、より精度の高い先進的な造形方式である「レーザー焼石法」の特許がついに期限切れを迎えます。「レーザー焼結法」SLS法(Selective Laser Sintering)とは、粉末状の材料にレーザー光線を高出力で照射して焼き固める造形方式です。
造形プラットフォーム内にある粉末にレーザー光線を照射させて焼結させ、焼き固まればプラットフォームを下げます。この作業をレイヤー数分繰り返すことにより造形していきます。
「レーザー焼結法」は使用可能な素材の種類が多く、ナイロン等の樹脂素材以外にも、チタン/銅/ニッケル等の金属素材が利用できることも特徴です。また複雑なデザインの造形や金属素材での造形が可能な為、より実用的な物を作ることができます。また下から積層していくFDM方式では、造形物が造形中に倒れないように、ラフトやサポート部分の出力も必要ですが、「レーザー焼結法」は硬化後に造形物が沈まないのでラフト等のサポート部位の出力は不要です。造形後のサポート除去等はそれなりに手間な作業なので、これは大きいのではないでしょうか。

2013年は家庭用3Dプリンター元年でもありましたが、その市場をもう一段階成長させるには、やはり造形物の精度/品質/素材/造形スピード等の向上にあると思われます。FDM形式の家庭用3Dプリンターでフィギュアを作ることはできますが、実際には品質的には厳しい物があります。しかしレーザー焼結法では複雑なデザインの造形も可能な為、フィギュア等もかなりの精度で出力が可能になり、まさに私たちがイメージしている3Dプリントを自宅で出来るようになるのかもしれません。
2009年に特許期限切れを迎えたFDM以降の市場の拡大が示した通り、レーザー焼結法の特許切れにより3Dプリンター市場はより大きく成長すると思われます。
2014年中に10万円を切る「レーザー焼結法」の家庭用3Dプリンターが登場するのか。おそらく多くの3Dプリンターメーカーは、2014年2月の特許期限切れに合わせて「レーザー焼結法」の家庭用3Dプリンターの開発をすすめているのでしょう。

1万円のチョコレート3Dプリンターが登場!

食品を3Dプリンティング技術で作り出すフードプリンターが2013年はいくつか登場したが、年が明けて2014年、食品関連の3Dプリンターのニュースが相次いでいます。
今年のCESに登場した「ChocaByte」は、Quinn Karaitiana氏によって開発された99ドルの家庭用チョコレート3Dプリンター。専用チョコレートを付属のカートリッジに入れて、カートリッジをお湯やレンジで温めてチョコレートを溶かします。カートリッジ内のチョコレートが溶けたら3Dプリンターにセットして出力開始。市販のチョコレートが使えない点が残念ですが、チョコレートカートリッジは4つで1,000円と、こちらもお手頃価格。

また3Dプリンターのリードカンパニー、3Dシステムズも今年のCESでフード3Dプリンター「ChefJet」を発表しています。「ChefJet」はカートリッジに砂糖/香味料/着色料/水を入れて飴や砂糖菓子を作ることができます。3dprinter ChefJet「ChefJet」は白黒のモノクロフードプリンターとなっており、価格は約50万円。またカラー出力が可能な「ChefJet Pro」は約100万円となっており、共に、2014年の下期に発売が開始される予定となっています。
宇宙食を3Dプリンターで作る研究をNASAが進めていたり、ピザを3Dプリンターで作ったり、3Dプリンティング技術は食べ物の市場においても、一つのカテゴリーとなっていくのかもしれません。

iPadで3DスキャンができるiSenseを3Dシステムズが発表!

2014年の3Dプリンティングにおいて一つのキーワードとなりそうなのが3Dスキャニング。米ラスベガスで開催中のCES2014でCUBEでおなじみの3D Systems社がiPadに取り付けて利用できる3Dスキャナー「iSense」を発表しました。この「iSense」に見覚えのある人も多いはず。「iSense」はアメリカのスタートアップOccipital社がキックスターターで1億3千万円の支援を集めた「Structure Sensor」を、3Dシステムズ用に提供しているOEMモデルの商品。「iSense」はStructure Sensorアプリと互換性があるようです。価格は499ドル。日本円で約5万円。2014年7月~9月頃にCubifyにて発売の予定。ストラタシスがMakerBot社を買収したり、3Dシステムズ社がOccipital社から3DスキャナーのOEM提供を受ける等、大手3Dプリンターメーカーもあの手この手で市場に製品を投入してきます。

iSenseはiPadに接続して、そのiPadを持ちながらスキャニングしたい対象物の周りを歩いて撮影します。
スキャニングしたデータを3DプリンターCUBEで出力したり、3Dシステムズ社が運営するコミュニティー「Cubify」に投稿したりすることもできます。「Cubify」に投稿したデータは、家庭用3Dプリンターでは出力できないような素材での出力を、Cubifyで出力代行してもらうこともできます。

3Dシステムズ社は、家庭用3Dプリンターのラインナップとして、CUBEシリーズを展開していますが、家庭用3Dスキャナーは、ハンディータイプの「Sense 3D scanner」を販売しており、家庭用3Dスキャナーのラインナップとしては“Sense”をシリーズ化していくのかもしれません。それ以外にもハイエンドモデルのGeomagic Captureも発売していますが、こちらは約300万円という高価格帯となっています。

なお、本家「Structure Sensor」は、iPad用ブラケットとLightningケーブルが付いている「Structure Sensor for iPad」が約3万5千円(349ドル)で2014年5月頃に発売予定となっています。それよりも約1万5千円高い「iSense」はちょっと高い気がしますが、1万5千円分高い付加価値は何になるのでしょうか?アフターサポート等は非常に親切なことで有名な3Dシステムズ社。国内でもCubeのノズルが詰まった等の連絡をしたら、プリンターヘッドごと無料で送ってきてくれた等の報告もありますが、今回の「iSense」もそのような親切なアフターサポートとなるのでしょうか。ただ、3Dプリンターほど3Dスキャナーは壊れることが無いような気もします。

MakerBot社が新モデル3機種を発表!

アメリカのラスベガスで開催されているCESでは、3Dプリンターの新モデルが続々と発表されています。昨日お伝えした3DシステムズのCUBE3に続き、家庭用3DプリンターのリーディングカンパニーMakerBot社が、MakerBot Replicaorの新モデル3機種を発表しました。MakerBot社は、3Dシステムズ社のライバル企業でもあるストラタシス社に昨年買収されています。大手2社による家庭用3Dプリンター市場の覇権争いが非常に熱いです。
今回発表された3つの新モデルは、
MakerBot Replicator Mini:$1,375
MakerBot Replicator:$2,899
MakerBot Replicator Z18:$6,499
の3機種です。では順番に見ていきましょう。

  • MakerBot Replicator Mini:$1,375

makerbotminiMakerBot Replicator Miniはこれまでの初代MakerBot Replicator/MakerBot Replicator2・2Xの廉価版モデル。MakerBot Replicator2Xが28万円だであったが、それよりも約14万円も安くなっています。こちらのモデルの特徴は簡単操作のエントリーモデルとなっており、簡単に組み立てられるなど、初心者にもやさしい製品となっています。新たな機能としては、プリンタヘッドの交換が可能になっており、フィラメントの残量を自動で検知し、スマートフォンに通知する機能も実装しています。また今回のモデルの目玉は、3Dプリンターのプラットフォーム内にカメラが内臓されており、スマホ等で造形の進捗等を確認することができます。3Dプリンターは、少しの大きさの造形物でも数時間かかり、場合によってはエラーになっていたり、フィラメント詰まり等が起こるので、頻繁に順調に造形されているかを確認する必要がありました。朝出かける前に出力設定をして自宅に戻ってきたら完成、というような出力をしていた人も多いとお思いますが、自宅に帰ってきたら、エラーで止まっていた、出力が失敗していた、等の経験はあるかと思います。そのような課題に対してのMakerBotからの回答ということになるのでしょうか。プリント中の様子を撮影してソーシャルメディアに共有する機能もあるようです。Thingiverseをより成長させようという戦略かもしれません。

  • MakerBot Replicator:$2,899

makerbotMakerBot Replicatorは、これまでの初代MakerBot Replicator/MakerBot Replicator2/MakerBot Replicator2Xの後継機モデルになります。これまでは2や2X等のようにVerナンバーがふられていましたが、今回のモデルはシンプルに「MakerBot Replicator」となっています。世代でいうと、初期モデルからは第5世代のモデルにあたります。MakerBot Replicator2よりも11%大きなサイズの造形が可能で、価格は約29万円となっています。

  • MakerBot Replicator Z18:$6,499

makerbotZ18MakerBot Replicator Z18 はプラットフォームが大きく、大きな物を出力することができます。家庭用3Dプリンターで、横:30.5cm/縦:45.7cm/奥ゆき:30.5cmというのはトップクラスの大きさではないでしょうか。3.5インチの液晶ディスプレイを有しており、プリントプレビューやプリント状況の確認、セットアップ等が画面で行えます。65万円という価格はちょっと高いような気がしますが、それなりの価値はあるのでしょうか。
3DシステムズのCUBE3に続いて、MakerBot社(ストラタシス)もCESに合わせて新モデルを投入してきました。2014年もますます3Dプリンター市場は盛り上がっていきそうです。